福岡高等裁判所 昭和28年(う)1979号 判決
職権で調べると起訴状記載の公訴事実(二)は被告人は「同年(昭和二十八年)二月頃の午後十時頃前後三回に亘り同村(八女郡忠見村)大籠の自宅において、池田厚之等が八女製紙から窃取して来たものであることを知りながらパイプの切端、パイプ接手、鉄屑、ボイラーロストル、分銅、ピーター水かき、沙紙機分銅等時価一六、五〇〇円相当を代金三、〇〇〇円にて買受け賍物の故買をなし」たものであるというのであつて、冒頭の「前三回に亘り」との記載によると、被告人が三回に亘つて賍物の故買をした事実を併合罪として起訴したようにも見得られるし、又後段、被告人が買受けた賍物の品名代金等を一括して摘示しているところからみると、包括的に一個の賍物故買の事実を起訴したかのようにも解されて、訴因自体不特定であるのにもかかわらず、原審はこれをそのまま引用して、被告人に対し右と同一の事実を認定しているのであるが原判決のあげている証拠によると被告人は判示(一)のとおりに、池田厚之に窃盜を教唆した結果、その教唆に基ずき、同人は他の者と共謀して最初(一)昭和二十八年二月初頃、つぎに(二)その四、五日後さらにそれから(三)一週間後の三回すなわち同年二月初旬頃から同月下旬頃迄の間、前後三回に亘り、日を異にして毎回午後十時頃判示八女製紙の工場内から判示パイプ切端、パイプ接手、等の鉄屑類を盜み出して、その都度これを被告人方に持ち込んだので、被告人はいずれもその情を知つて判示のとおりこれを買うけた事実を認定することができる。
ところで、犯人が日を異にして三回に亘り賍物の故買をした場合においては、たとい犯人及び売渡人が同一であつても、特別の事情のない限り、三個の賍物故買罪を構成するものと解するのが相当であるから、若し仮りに原判決が前掲の事実を以て包括的に一個の賍物故買罪を認定判示した趣旨とすれば、特別の事情の認められない本件においては、右認定した事実と証拠との間に理由のくいちがいがあるものといわねばならないし、又証拠によつて認められるように、三個の賍物故買罪を認定判示した趣旨とすれば、たといその行為が同一罪質であり手段方法等において共通していても、その各個の行為の内容を一々具体的に判示し、更に日時場所等を明らかにすることによつて一の行為を他の行為から区別し得る程度に特定しなければならないのにかかわらずただ、前記のとおり包括的に判示して、各犯罪行為の具体的内容を特定しなかつた点において理由不備の違法があるものといわねばならない。してみれば原審が前掲起訴状記載の公訴事実(二)の訴因の個数について、検察官に対し釈明を求めて不明確な訴因を明らかにすることなく、漫然、これを引用してそれと同一の事実を認定判示したのは、以上説明したところによりいずれにしても原判決に理由のくいちがい又は理由不備の違法の存することが明らかであるから、原判決は刑事訴訟法第三百九十七条第三百七十八条第四号に則り破棄を免れない。
(後略)